基礎問題集

1.通常問題集の問題点

 物理の学習のために多くの問題集が市販されており、これら問題集は次の三種類に大別される。基本に焦点を当てた問題集、教科書準拠の問題集、入試用問題集である。この中の入試用問題集である「物理重要問題集」の問題をすべて理解したうえで解くことをできるようにして入試に臨めば日本全国どこの大学の入試問題でも合格点を取ることができるはずである。国公立大学受験を目指している生徒はこの問題集を解くことができる力をつけることを最終目標としてほしい。 

しかし、この問題集も公式を覚えて、その使い方の練習といった感じが強い。解説を見てもいきなり「公式より」となっており、何故その公式を使うのかがわかりにくい。また、解き方が統一されてなく、同じような問題でもまったく違う解き方がされており、多くの生徒は混乱するようである。

 「物理重要問題集」を解く力が不十分な生徒がこの問題集に臨んでも時間ばかりを浪費して学習効率が悪い。そこでより基本的な「セミナー」や「ニューステップアップ」問題集に挑戦するのであるが、これら問題集も公式記憶が中心であり本質理解が難しく解き方の記憶になってしまう。その場合、同じ問題が出れば解けるが、何故そうするのかが分からないために、少し問題を変えられたら解けなくなるのが実態である。やはり、入試問題が自由に解けるようになるのは難しい。

 こういった記憶力に頼った学習では、記憶量が膨大なものになり覚えきれず、入試における得点力には限界が生じてくる。ある程度以上はいくら勉強をしても成績が伸びないということになる。全国の高校生はこのような学習をしているのである。

2.基本概念の理解の必要性

 こういった点を解決するには、物理の基本概念をしっかりと理解すれば良い。「力とは速度を変化させるもの」「エネルギーとは物体を動かす能力」「仕事とはエネルギーを使うこと」などの意味からすべての法則・公式が誘導できるようにしておけば、意味が分かるようになり、応用力がつき、どのような入試問題でも簡単に解くことのできる力がつくのである。

この力をつけるために導入したのが、「物理基礎問題集」である。「物理基礎問題集」は「物理証明問題編」と「物理基本問題編」に分けられる。物理の基礎概念を理解するのに最も良い方法は自らの力で全ての公式・法則を証明することである。どの項目を証明すれば良いのかをまとめたのが「物理証明問題編」である。この問題を理解した上ですべてこなせば「物理重要問題集」の問題をこなすことができるはずである。その結果日本全国どこの大学でも物理で合格点が取れる結果となる。

「物理証明問題編」をこなすのが難しい生徒は「物理解説書」を読んでから、「物理証明問題集」に挑戦すると良い。「物理解説書」が理解できにくい生徒は補習講義を聞いてほしい。

補習講義→物理解説書→物理証明問題集→物理重要問題集のルートでも、物理の最初の力・エネルギーあたりが重たく、途中で挫折してしまう生徒が出てきた。強い意志があればこなすことができるのであるが、少しでも楽に力がつけられるようにと用意したのが「物理基本問題編」である。

3.物理基本問題編について

 「物理重要問題集」は慣れてくると、「セミナー」よりも問題が解きやすくなる。この問題集は文章が長く、小問集合の形になっているために、順番に解くことにより問題の流れがつかみやすく、たとえ公式を忘れていても結構解けるのである。そこまでくればもう充分に力がついているのであるが、慣れるまでが大変である。「物理重要問題集」は、あるステップから、次のステップまでの幅が大きいために解くのが大変なのである。

「物理基本問題編」はこれら問題集の短所を取り除き、長所を集めた問題集である。「物理証明問題編」の基礎概念理解、「物理重要問題集」の問題の流れの他に物理基礎概念の確認を小ステップで理解するようにした問題集である。すべての問題が超小ステップの小問集合の形になっており、問題数が多いが一つ一つの問題が容易で小ステップなので一問あたりにかける時間は少なく、時間がより有効に使えるように配慮してある。

この問題集は次の特徴を持っている。

①      計算に時間がかかるのは無駄と考え、重力加速度の大きさを10m/s2とするなど、すべての計算問題は極めて数値計算が簡単になるように、そのほとんどは一桁の整数計算にしてある。分数になることもほとんどない。正規には無理数は有効数字を考える必要があるが、根号のままにしてある。実際の入試問題を解くにはこの点に注意が必要である。

②     各項目の最初には物理量の意味を確認する問題を配置してある。超簡単な問題であるが、これを解くことにより物理概念を確認することができる。

③     文字の扱いになれない生徒のために、多くの項目で最初に数値計算を行い、次に同じような問題を文字で計算するように誘導してある。この問題をこなすことにより早く文字になれることを目的としている。

④     モーメント計算などドリルが必要な項目では同様な問題を数多く配置し、練習ができるように問題配置してある。

⑤     物理に関する基本的事項がすべて納得できるように基本問題集合で誘導してある。最初から問題を解いていけば、公式や基本原理を全く覚えていなくても全項目に納得しながら問題を解くことができるように問題配置してある。

⑥     物理量の多くは「力」「電場」など、見ることのできないものである。見ることができないから丸暗記をするのが実体であるが、頭の中に正しいイメージを作ってしまえばそのイメージに沿って考えればよいから、逆に簡単に解けるのである。この問題集はイメージが形成されるような問題を各項目の最初に配置している。

⑦     「物理証明問題編」が重くてこなせない生徒のために、すべての物理法則・公式を小問集合で誘導してある。この問題をこなすことにより、法則・公式理解ができる。

⑧     教科書・参考書にはないが、入試問題を解くためには知っておくべきテクニックがあるが、そのテクニックも小問集合の形で原理を理解したうえで使えるように小問集合で誘導してある。

     重要な基本事項は異なる問題の小問で何度も出てくるので、形を変えて何回も反復ができる。

⑩     基礎力をつけると同時に応用力をつけるために「物理重要問題集」に匹敵するような応用問題も問題の単純化をはかり、小問集合で誘導してある。

⑪     物理Iは中途半端で終了する項目があり、中途半端なためにかえって理解しにくい点がある。その単元は物理Ⅱの内容を物理加えて発展的に問題を加えている。

 

 このような特徴を備えた問題集なので、全く物理が分からない状態から「物理重要問題集」をこなす力をつけるまでの力の養成ができるはずである。

 このように要所要所に工夫を凝らした問題集であり、このような形式は既存の問題集には存在しない。その反面、他の問題集にはない欠点を抱えている。

「物理基本問題編」は小ステップの問題集であるが、入試問題は小ステップではなく、有効数字なども配慮しなければならない。そのために、この問題集だけでは入試問題に対応する力をつけるのは難しいと思われる。あくまで、ステップアップの問題集と捉えてほしい。この問題集をこなした後、必ず入試用問題集を解くことを忘れないようにしてほしい。「物理基本問題編」を解かないとき、入試問題集に手も足も出なかった生徒も「物理基本問題編」をこなした後なら、かなり容易に解くことができるようになっていると思われる。

 上と関連するが、もう一つ欠点がある。いきなり他の問題集をやろうとしても手も足も出ない生徒が「物理基本問題編」に挑戦すると、比較的簡単に全問解けるために、物理に対する「わかる」という感覚が強く出てくる。そのために、「わかったつもり」になってしまい、それ以上の学習をしなくなってしまうようである。この問題集は「できる」ようにする問題集ではなく、「わかる」ようにするステップアップが目的の問題集であることを忘れないでほしい。必ずこの問題集を解いた後、入試用問題集を解くことを忘れないこと。

 学習時間と得点力の関係
 

 上のグラフは、ある項目の学習をはじめてからの学習時間と、その項目の得点力との関連を表わしたものである。学習を始めてからしばらくの間は得点力が全く上昇しないが、ある程度のところから上昇を始める。このAに達した時、 多くの生徒はわかったという感覚が強く出てくる時で、このときに学習をやめてしまうことが多い。しかし、このときの得点力はさほど高くないのである。

「分かったつもり」になって試験で点が取れない状態を示している。成績を伸ばさなければならないとあせっている人ほど、この状態になっていくら勉強しても成績は上がらないという状態になる。Aの状態から後一歩、 Bまで学習すると短い時間ながら得点力が飛躍的に向上するのである。得点力をあげるには「もうこれで充分」と思ってから、さらにもう少し学習するということが大切である。

 「物理基本問題編」はAまでの学習用問題集と考えてほしい。Aの学習期間は分からない中の勉強であるために効率が悪く、面白くなく、つらいものである。これを比較的短時間で楽にこなせることを目的としている。 「物理基本問題編」を使えば、他の問題集を使うよりはるかに短期間でAまで達することができるはずである。しかし、「物理基本問題編」のみこなしたのでは得点力は決して高くないのである。既存の入試用問題集をこなすことにより Bの状態に達するのである。

4.「物理基本問題編」の効果的な活用方法

 「物理解説書」「物理証明問題編」「物理基本問題編」はすべて同一の線で編集されているので、どれか一つ理解すれば他が理解できるはずである。3年生は入試突破のために学習しなければならないことが山ほどあるが、 学習時間には限りがあり、全員が勉強するので、単に学習時間を増やしたのでは偏差値は上がるはずもない。学習時間が少ないと偏差値は下がるが、増やしたからといって今の成績を維持することができるのみで偏差値を上げるこ とはできない。偏差値を上げるには少しでも効率的な学習をしなければならないのである。

 物理の偏差値を上げるには基礎概念の理解が欠かせない。基礎概念理解なしで物理を学習した場合偏差値の維持はできてもあげることは不可能である。「物理解説書」「物理証明問題編」「物理基本問題編」 はいずれも基礎概念の理解に焦点を当てている。自分で学習し理解を進めることができる場合はそれでも良いが、補習の利用を勧める。

 補習は「物理解説書」に沿った講義形式で行なわれる。板書をノートに取る間や、眠気などで重要項目を聞き逃すことがあるので、「物理解説書」に目を通し、重要項目に印をつけながら講義を聴くと良い。補習1回に単元を完結し、 次の補習まで日数を空けているので、その間に必ず「物理解説書」を読みながら「物理基本問題編」を解くこと。最低限次の補習までには「物理基本問題編」の該当単元の問題をすべて解いておくこと、そうすれば次の補習講義が 理解しやすいはずである。そして、なるべく早く「物理重要問題集」に取り組んでほしい。間が空けば空くほど学習効率が落ちるので、補習講義を聴いてすぐに「物理基本問題編」、その直後に「物理重要問題集」を解くことを勧める。

11月下旬までに「物理重要問題集」をすべて解いておけば、センター試験・個別試験と今後の学習計画が建てやすくなる。これを確実にこなせば、少なくとも物理に関しては全国どこの大学でも合格点を取るだけの力がついているで あろう。