物理実力養成について(実例)

 この文章は、物理の実力向上の様々な実例です。参考にしてください。

1. 前期試験後の実例

 生徒A(女子)、物理が要らないということで、物理の勉強はまったくしていなかった。前期試験も物理がないので、学習時間0であった。しかし、後期試験で物理のみがある大学をなぜか出願していた。この生徒は前期試験が終わった次の日(2月26日)に、物理準備室にやってきた。

A:「先生、後期試験のために物理を個人指導してください。」
物理:「物理だけか」
A:「物理だけ500点満点です。」
物理:「現在物理はどれだけ分かっているのか」
A:「まったく勉強してないので、0と考えてください。」
物理:「後期試験は2月13日なので、2週間しかない。土日を除くと実質10日しかないぞ、やれるだけのことはやってみるが、物理付けになるぞ」
A:「それで物理ができるようになるなら、かまいません」
物理:「じゃあ、学習計画を立てるぞ、重要問題集の目次を見ると21項目ある。最後の総合問題を除けば20項目となる。単純計算で一日2項目は片付けないといけないことになる。朝一番で準備室に来て30分ほど講義を受けること。その日一日かけて重要問題集の問題を解き、夕方物理準備室に来て次の単元の講義を聴く。家でその単元の問題をすべて解く。これをやれば、単純計算で重要問題集は完了することになる。理論上そうなるが実際にやったことはないので、実験台にすることになるが、それでもいいか」
A:「実験台でもかまいません。やります」

この生徒はこれを実践した。一日で2項目を片付けるのはかなり厳しく、少し解き残しがあったが、それを土日で片付けた。3月12日には重要問題集をすべて終わらせていた。
本番を向かえ、結果を聞くと、最低でも8割はできたとのことである。
たった二週間での0からの物理学力向上の最短記録である。

 生徒A(女子)、物理が要らないということで、物理の勉強はまったくしていなかった。前期試験も物理がないので、学習時間0であった。しかし、後期試験で物理のみがある大学をなぜか出願していた。この生徒は前期試験が終わった次の日(2月26日)に、物理準備室にやってきた。

2. 記憶中心の学習をしていた生徒の実例

 生徒B(男子)、この生徒は本質を捉えずに、公式暗記、解き方暗記で重要問題集を解こうとしていた。2月10日ごろのことである。

B:「先生、この問題が分かりません」
物理:「どこが分からんのか」
B:「最初からまったく分かりません」

 その問題の解き方を最初から説明した。その生徒は20分後ぐらいに

B:「先生この問題もお願いします。」

 と、次の問題を持ってきた。同じことがさらにもう一度繰り返された。

物理:「ちょっと待て、おまえ、ひょっとしたら全部分からないのではないのか」
B:「そうです。」
物理:「あと15日ぐらいしかないが、今から、こんな勉強をしていて間に合うのか?」
B:「無理だと思います。でもやるだけやらないと後悔する。」
物理:「ためしに講義をやってみようと思うがどうか。少しは分かるようになると思うよ。」
B:「今までの様な勉強をしていてもだめだということだけははっきりしているので、先生にお任せします。」
 ということで、この生徒に講義をした。講義終了後
物理:「これで問題を解いてみろ」

と言うと、Bは帰っていった。次の日、Bは明るい顔をして物理準備室にやってきた。

B:「先生、この単元の問題が一日で全部解けました。意味が分かるということはすごいですね。先生、次の分野もお願いします。」
 この日を境に毎日のようにBはやってきて、物理のほとんどの単元を講義した。

この生徒は前期試験で全部解けたと言っていた。
 現在これを成功例として、講義補習をしているのである。

3. センター3日前にやってきた生徒

生徒C(女子)、物理Iの力学だけは講義を聴いて、ある程度理解していたが、塾でのアドバイスを信用し、途中で投げてしまった。物理の成績はその後、まったく伸びず、マーク模試で30点取れることはまれであり、ほとんど20点台であった。波動と電気はさっぱり分からないという。この生徒がセンター直前の水曜日に、ある問題が解けないと質問に来た。

C:「先生、この問題が分かりません」と電気の問題を持ってきた。
物理:「これ、解き方を言うのは良いが、解き方を聞いたらこの問題は解けても、他の問題は解けないだろ?」
C:「解けないと思います」
物理:「それで、センター間に合うのか?」
C:「間に合わないと思う。」
物理:「以前講義を聴きにきていたが、あのまま来れば、力はついていただろうに、どうして来なくなったんだ?」
C:「塾でいろいろ言われて、塾の勉強をしていました。でも力がぜんぜんつかないので、もう一度行こうと思ったけれど、来にくかった。」
物理:「そんなもの一切気にしなくていい。あと3日しかないが、今から3日間、波動と電気を全部講義しようかと思うが、どうだ?」
C:「どうせだめなんだから、やってみます。」

 ということで、3日間集中的に講義した。センター直前で物理以外の勉強もあり、講義を聞くだけでほとんど問題は解いていないと思われるが、この生徒はセンター試験で物理62点を取った。たった3日で模試の点数を一挙に30点以上上回ったのである。
 これを成功例として現在センター直前にマラソン補習をしている。

4. まったく自信がない生徒の実例

 ある年、4月当初の授業で「物理がまったくわからん生徒は個人指導に来るように」といった。物理が完璧に分からないことに自信を持っている生徒D(男子)がやってきた。

D:「わし、物理が完璧に分からんのじゃが、わしでもわかるようになるかね?」
物理:「今まで、講義してだめだった生徒はいない。もし、力がつかなかったら、君が第一号となる。でも、交換条件があるぞ。講義を聴いたら必ずその日のうちに問題を解くこと。」
D:「じゃあ、わしが第一号になるじゃろ」

この生徒に対して講義した。しかし、こちらが期待するほどの成果が現れなかった。「だめな生徒第一号かな?」と思ったが、ある日原因を探ってみた。

物理:「講義は理解しているのか」
D:「聴いたら分かる」
物理:「じゃあ、何で点が取れんのか」
D:「分からん」
物理:「聴いてすぐに問題を解いているのか?」
D:「重要問題集は重たいので、セミナーの基本問題を解いている」
物理:「セミナーは文章が短い、重問を解け」
D:「分かった、解いてみる」

数ヵ月後、この生徒は「先生、物理ってちょろいもんだね」と言っていた。
この成功例は講義を聴いたあと長い文章の問題を解くことが大切だということを意味している。現在、講義を聴いたあと重要問題集を解くことを勧めている。
 この生徒はある日、次のようなことを言っていた。

D:「先生教科書を書いてくれ」
物理:「教科書を読めば分かるだろ」
D:「先生、教科書を読んだことがあるんか?読んでみてや。○○であることが知られている。こればっかりや。これで分かれ言うんか」
物理:「確かにそうだね」

 個人指導では人数が多くなると対応できないので、多くの生徒に一挙に分からせる方法は何かないかと考えていた。これをきっかけとして講義内容そのままに「物理解説書」を作ることになった。
 また、講義内容のほとんどは公式誘導なので、公式誘導の問題集「証明問題集」も作った。
現在、公式誘導してから重要問題集に入るように勧めている。

5. 意外な意見

生徒E(女子):「先生の言うとおり、勉強しているのだけれど、重要問題集が解けるようになって、うれしくてセミナーの基本問題をやってみた。ほとんど解けんかった。これ、何でですか?」
物理:「そんな馬鹿なことはないやろ?セミナーの基本問題のほうが見やすいじゃないか?」
E:「重要問題集は文章が長いので読んでいくとその流れに沿って解ける。でも、セミナーは公式を覚えてないと解けない。」
物理:「市販の問題集は基本的に公式を覚えて解くように編集されているので、それはしょうがない。でも、入試問題はセミナーではなく重要問題集の方だからそれでいいのではないか」

 別の日に別の生徒F(男子)が言った。

F:「先生、重要問題集は解けるようになったのに、マークの問題が解けん」
物理:「文章が短いからやろ。」
F:「そうなんよ。長い文章に慣れたら、短い文章の問題がうっとうしい。かえって分からん。それから、重要問題集の解説を見たら自分が解いた方法とかなり違っている。自分が解いた方法のほうが簡単だけど、こういう場合、どうすればいいのですか」
物理:「重要問題集はいろんな人が解説を書いているようで、解き方が一定していない。他人の解き方を真似しなくてもいい、自分の納得できる解き方でよい。筋道さえきちっとしていたらそれで良い。むしろ別の解き方ができたほうが力がついていることになる。」

 この生徒は次のようなことも言っていた。

F:「先生、物理Ⅰと物理Ⅱどちらがむずかしいんかね。」
物理:「ひょっとして、物理Ⅱの方が見やすいと思ったのではないか?」
F:「そうなんよ、物理Iはいろいろとひねりがあって、悩むけど、物理Ⅱはほとんどが講義内容そのままなんで、ほとんどスッと解ける。」
物理:「一般には物理Ⅱは難しいと思われているので、大学側もひねった問題は出さない。むしろ物理Ⅱの方が見やすく感じるはず。多くの大学の二次試験では出題される問題のほとんどは物理Ⅱのはず、かえって有利になるのではないか」
F:「そうじゃね。先生、過去問はいつごろから解けばいいのですか」
物理:「重要問題集が終わっていないのに過去問に挑戦しても時間の無駄じゃろ。どうせ解けんよ。重要問題集がすべて解けてからでいい。それなら、おそらくすべて解けるはずだから、自信を持って本番を迎えられる。」
F:「そんなん言ったら、本番のちょっと前になるかもしれないよ。」
物理:「かまわんよ、下手に早くから過去問の傾向を知って、そのためだけの勉強をすると、傾向が急に変わってあせることもあるよ。それに、本質を捉えているのだから、どのような傾向で、どのような形式であろうが、関係なく解けるはず。もっと自信を持て」
F:「確かにそうじゃね。去年、数学の傾向が急に変わって、みんな真っ青になったと先輩が言っていた。」

 この生徒は過去問を解いてからこんなことも言っていた。2月中旬である。

F:「先生、広大の(物理)入試問題は、なんで、こんなに見やすいのか。わしは物理で勝負をかけようと思っているのに、あれじゃ、みんなできるじゃないか。なんぼ頑張っても満点以上はとれん。」
物理:「本質を捉えているから見やすく見えるんよ。ある人に聞いた話じゃが、難しい問題にすると受験生の平均点が限りなく0点に近いので見やすい問題にしないと、生徒が選べないということらしい。あの問題でもほとんどできていないと聞いた。その中で満点近い点数をとれば、合格間違いなしじゃろ?」
F:「そうじゃね。頑張ってみるわ」

 覚えていないと文章の短い問題は解けない。センターは文章の短い問題を短時間に多く解く必要があるので、二次試験とは別のテクニックが必要である。これをきっかけとして、記憶の確認をする「忘却チェック」を作った。12月以降これを使って覚えるべきところを覚えるように勧めている。

6. 受験報告

● 生徒G(男子)→本質をしっかりと捉えており、すべての公式を誘導している生徒。受験後の報告での言葉

G:「みんな緊張して控室で、待っているとき、他の生徒は公式集を見ていた。これを見て、『勝った』と思った。僕は教科書を見ていたよ。公式集を見ているということは公式を覚えていることだから、本質を捉えていないはずだよね。『こいつらに負けるはずがない。』と思ったら落ち着けた。当然、全部できた。」

● 生徒H(男子)→重要問題集をすべて解いて受験した生徒、物理の模試偏差値は10月時点で40

H:「余裕で全部解けた。見やすい問題なのかと思って、出るとき周りの生徒の答案を見ると、みんなほとんど白紙だった。自分にすごい力がついていると思って感動した。先生の言っていたことはほんとだった。半年前の自分だったら白紙答案だったと思う。」

● 生徒I(男子)→AOで難関大学に挑戦した生徒

I:「受験してきました」
物理:「できたか」
I:「ほとんどはできたと思う。一部分からなかったところも後の面接では、しっかりと答えられた。『ドップラー効果を説明せよ』と言われたとき、『音源が動いても音速は変わらないから・・・』というと、面接官は『それが分かっているのか?宇宙物理学科は物理が重要なのに物理を知らない生徒が多くて困っている。あなたはすごいですね』と言われた。公式誘導をしているから『そんなの当たり前』と思っていたけどそうじゃなかったね。」
物理:「本質をしっかりと捉えている高校生はほとんどいないから、しっかり分かる生徒は貴重品だと思うよ。でも、そんなことを言われたんなら、合格じゃないのか?」
I:「それは分からん」

 この生徒は合格していた。

7. 失敗例

● 生徒J(男子)→センターでほとんど最高点を取った生徒。

J:「先生、2割ぐらいしかできんかった」
物理:「なんでや。問題集を解いたのではないのか」
J:「センターで取れたから、安心してあまり解かんかった。」
物理:「気を抜くなといっただろ」

 しかし、この生徒は合格していた。

● 生徒H→先ほどの生徒と同一人物、AO受験後

H:「公式はすべて誘導して、受験に行ってきたよ。」
物理:「できたか?」
H:「できんかった」
物理:「なんで?」
H:「重要問題集を解いていなかった」
物理:「やっぱり解かんかったらだめだ。」
H:「でも、他の受験生と話をして他の学校の生徒で意味を捉えている生徒はいないことが分かった。先生の言うとおりだった。どこの生徒も公式・解き方の暗記をしていた。それだけにできなかったのが悔しい」

 この生徒はこの失敗を糧としてその後重要問題集をすべて片付けて、前期試験を迎えた。
 重要問題集を解いていない生徒はことごとく失敗している。二次試験で高い点を取るには重要問題集をすべて解くことが重要である。

8. その他

●生徒K(男子)→半信半疑の生徒

K:「先生の講義を聞いて、公式を誘導して重要問題集を解こうとしても、解けん」
物理:「解説を読んで理解できたか」
K:「解説を読んだら分かる」
物理:「じゃあ、解けないのは気にしなくて良い。忘れたころもう一度解けばよい。重要問題集を解く目的の第一は文章を読む力の養成だ。いくら物理がわかっても問題文の意味が分からなければ解けないだろ。重要問題集でなくても良いが、長い文章の問題を解け。解説を読んで理解できるということは文章を読み取ることができるということだから気にしなくても良い。解説を読んで理解できなかったら、どうやって物理の力をつけるんだ?」
K:「人に聞くか、覚えるしかない」
物理:「それで力がつくか?」
K:「ほとんどつかない。」
物理:「解説を読んで理解できるからこそ、やればやるほど力がつくのだ。物理の力をつけるには、まず、解説を読んで理解できる力をつけなければならない。その力がついているのだから順調だということになる。」
K:「でも一問解くのにものすごく時間がかかる」
物理:「どれぐらい?」
K:「20分ぐらい」
物理:「20分で解ければたいしたもんだ。分からんということですぐに解説を見ないように。しっかりと悩むからこそ、物理法則が頭に刻み込まれるのだ。悩んでないとすぐに忘れるぞ、最低でも20分は考えろ。」
K:「でも、ものすごくしんどい」
物理:「しんどいのは、力学分野だけだ。波動に入れば少しは楽になる。物理Ⅱは余裕で一挙に片付くはず、だから本番で満点が狙える」
K:「物理Ⅱはセンター後で間に合うのですか?」
物理:「私立大学は間に合わないが国立大学は十分に間に合う。ただし、条件として11月末までに重要問題集の物理Ⅰ分野は最低でも片付けておくこと。これができていないと苦しいと思う。」
K:「Aだけでいいんですか」
物理:「広大以上はBまでやっておく必要があると思う。以前『広大はAでよい。』と言っていたが、広大の物理が最近難易度を上げているので、Bが必要だ。でもBをやるのはセンター後でも良い。センターまではAだけでも良い。」

 この生徒はかなり苦労したようであるが、このようなことを言っていたのは最初だけで、物理Ⅱはかなり順調になり、受験時に全部解けたと言っていた。

● 生徒L(男子)→物理はセンターまでしか要らない生徒

L:「先生、僕はセンターまでしか物理はいらんのじゃが、それでも重要問題集はしないといけないのか」
物理:「マーク問題だけの演習をしていては力がつかないよ。」
L:「なぜですか」
物理:「マーク問題は選択だから、中途半端な力でも正答が得られる。でも記述は、100%分からないと正答は得られない。だから、マーク問題では力がつかない。でも、マーク独特のテクニックもあるので、12月からマーク問題演習をうんざりするぐらいやる予定だ。重要問題集をやると、問題文を読み取る力がつくので、解説を見て理解できるようになる。この力さえつけばマークの問題でも、自分で問題を解き、分からなくても解説を見て理解できるから、解けば解くほど力がつくはず。解説を見て分からんものがどうやって力をつけるんか」
L:「確かにそうじゃね。やってみます。」
物理:「12月以降は毎日マーク問題を山のようにやって、解説は一切なし。そのために、膨大な問題量をこなせるよ。解説がない分だけ、自分で解説を読んで理解するだけの力がついている必要がある。そうでないと人に聞くか覚えるしかなくなるので、力はつきにくい。」
 この生徒はセンター後報告に来た。
L:「先生、重要問題集をやってよかった。やるまで物理は問題を見てもどこから手をつけていいかまったく分からんかったが、重要問題集を解いていたら、問題を見て先が読めるようになった。楽に解けたよ。でも、12月上旬ぐらいに高い点が取れるようになったので、他の教科ばっかりやって、物理はちょっと失敗した。」

 この生徒は7割ぐらいは解いていた。

● 生徒M→力がつかない生徒

M:「先生、重問やっているけど模試の偏差値はぜんぜんあがらんよ」
物理:「基礎が固まるまで上がりにくいよ。毎年本当に力がつくのは2月だ。10月の偏差値39だった生徒が二次試験で『満点かもしれない』と言う報告をしているよ。他にも似たような人が何人もいるよ。物理の知識があって、長い文章を読み取る力があって問題が解けないわけがない。直前に驚異的に伸びるよ。あせる気持ちは分かるが、あきらめないこと。公式や解き方を覚えるようにすると、偏差値は上がるが、本番では取れないよ。必ず伸びるからあせらないこと」

二次試験後

M:「先生、出た問題は全部分かった。でもいっぱい間違った。」
物理:「どれぐらいできたか」
M:「最低でも7割はあると思う。」

● 生徒N(女子)→12月になって個人指導を希望した生徒

N:「先生、今からでも間に合いますか」
物理:「間に合うも何もやるしかないのではないか。出た問題を分かるようにはできるが、問題を多く解いていないと良くミスをするので、実際に高い得点が取れるかどうかは本人しだいと言うところがある」
N:「やってみます。」

 この生徒はこれから直前までほとんど毎日のようにやってきた。センター後

N:「先生、あまりできんかった。」
物理:「わからんかったのか」
N:「出た問題はほとんどできそうに思えたのだけれど、あせってしまった。」

似たような報告をした生徒は複数いる。直前に来た生徒は分かるようにはなるが、問題演習が少ないので、あせりやすく、頭が真っ白になって解けなくなることが多いようである。早めに対応しよう。

9.重要問題集が順調に解けない生徒の実例

● 生徒O→講義から公式誘導までの時間が空いている場合。

O:「先生,重問が解けません。」
物理:「公式誘導はできているか?」
O:「一応やっているけど,やり方が良く分からん」
物理:「講義でやった公式・法則をすべて理解した上で自分で導けるようにすること,何を公式誘導してよいか分からない場合,しおりに沿ってやればよい。又は,基礎問題集の最後にある「証明問題集」をやっても良いよ。」
O:「それはやったけど,それでも公式誘導が良く分からない。」
物理:「それでは,講義から公式誘導までどれだけ空いているか?」
O:「2日ぐらい」
物理:「それは空きすぎ,すぐにやれ」

しばらく後

O:「解けるようになりました。」

● 生徒P→公式誘導から重問までが空いている生徒。

P:「公式誘導はしっかりやっても問題が解けない。どうしてか?」
物理:「公式誘導から重問を解くまで,どれだけ空いているか。」
P:「3日ぐらい」
物理:「それは空きすぎ,公式誘導の直後にやること。公式誘導から時間がたってから問題をやるとその間に抜けているから解けなくなる。すぐにやったらできるし,解く時間も短くていいのに,間を空けるから解けないし,解けても余分に時間がかかることになる。時間の無駄だと思わないですか。」
P:「確かに時間の無駄だね。すぐに解いて見ます。」

数日後

P:「先生,解けるようになりました。」

● 生徒Q→公式誘導が不十分な生徒

Q:「重問で解けるのもあれば解けないものもある。どうしてか」
物理:「最初からか?」
Q:「そういう問題もある。」
物理:「解説を読んで理解できるか?」
Q:「分かることもあるけど,分からないのが多い」
物理:「その症状が出るということは,公式誘導が不十分と思われるよ。」
Q:「一応やっているよ」
物理:「誘導した内容は,全部分かっているか」
Q:「全部じゃあない。」
物理:「たぶん,公式誘導が不十分だと思うよ。誘導内容は全部完璧に理解すること。時間がかかってもいいから公式誘導は完璧にして,それから,すぐに解いてみたら?」
Q:「やってみます。」

しばらく後

Q:「解けるようになりました」

● 生徒R→問題文をよく読んでいない生徒

R:「先生,問題が解けんよ」
物理:「講義→公式誘導→重問の間は空いていないか?」
R:「空いていないよ。すぐにやっているよ」
物理:「公式誘導の内容は完璧に理解しているか。」
R:「完璧だと思う」
物理:「ひとつの大問の半分ぐらいまでは実力で解けるか?」
R:「それができない」
物理:「問題文の意味が良く分かっているか。」
R:「意味が良く分からない」
物理:「国語の現代文は得意か?」
R:「大の苦手です」
物理:「問題文は何回読んでいるか」
R:「1回か2回」
物理:「問題の意味が分かるまで何回も繰り返し読むこと。最初は苦労すると思うが,ほかの生徒の状況からして,たぶん1ヶ月ぐらいで楽に読めるようになると思う。」

1ヵ月後

R:「解けるようになりました」

● 生徒S→じっくりと考えていない生徒

S:「いつまでたっても解けるようにならない」
物理:「ひとつの大問の半分ぐらいまでは実力で解けるか?」
S:「それができない」
物理:「問題文の意味が良く分かっているか。」
S:「良く分かっている」
物理:「解説を読んで理解できるか」
S:「できる」
物理:「じゃあ,文章は読めているようだね。では,問題を読んでから,解説を読むまでにどれだけの時間考えているか?」
S:「5分ぐらい」
物理:「それは短すぎる。20分考える人とそうでない人との間に明確な実力差が出ているという研究報告がなされている。最低でも20分は考えること」

1ヵ月後

S:「解けるようになったよ」

● 生徒T→講義が理解できない生徒

T:「先生,重問が全く解けない。」
物理:「講義が理解できているか。」
T:「講義の最初のほうは分かるけど,途中から分からんようになる。」
物理:「講義中寝とらんか」
T:「寝とらん,集中して聞いている」
物理:「算数は分かっているか?」
T:「分かっていると思うよ」
物理:「じゃあ,距離を速さで割ったら時間が出るけど,これなんでか説明できるか?」
T:「ハキジで覚えているから解けるけど,何でかは分からん」
物理:「それは算数が分かっていないと解釈するよ。算数が分かったら理解できるはず。過去同じような生徒がいっぱいいたけど,算数さえ分からせれば,短期間でできるようになっているよ。さすがに高校生だから,算数が分からないといっても小学生とは違う。20分ほど講義を聞けば,すぐに応用ができるようになるから気にしないで,講義を聞きに来なさい。」

20分ほどの算数講義を聞いて,しばらく後

T:「講義が理解できるようになったよ」

この生徒はその後,重問も解けるようになった。